2015-10-08

繁盛店を捨てて・・。鹿児島の「カキ小屋長者」はなぜ”移転”したのか?

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http://kakipedia.blog.jp/2015/takumi.html








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ヒトはどれほど潔く過去と訣別できるものなのだろうか。そもそも山奥に牡蠣小屋をつくる!と2年前に言われたときもその発想に驚いた。車通りがどうのとかいう以前に第一村人を発見するのも難しいようなエリア…鹿児島の人に聞いても「ソオ?ドコ?」といわれる始末。

ところが結論から言ってしまえば、彼はその賭けに勝ったことになる。2時間待ちの行列をつくり、東京からの観光客が観光バスで押し寄せ、鹿児島初の大規模カキ祭りを成功させた…山奥で万単位の集客に成功したのだ。彼はいう「山奥で牡蠣だから面白いんですよ」と。そんな彼がまたまたやらかした。

新たにカキ小屋を鹿児島の国分にオープンした。ところがそれがカキ小屋のビジネスメリットを一切放棄したものだったのだ!カキ小屋のビジネスメリットを一言でいってしまえば「夜逃げできること」。空き地があればすぐにオープンでき、期間限定もしくはうまくいかなければすぐに撤収できる。


「夜逃げ屋モデル」であるからこそ、ローリスクハイリターンであるからこそ、カキ小屋ビジネスはいまや時代の寵児たりえているのだ。が彼はそれを一切無視した。新たに土地を買い、ゼロから造成し、撤収のテの字も絶対に不可能であろう立派な建物をガッツリと建設してしまったのだ!

機材もほぼすべて新品…「浄化設備だけで1000万かかっちゃったんだよね…」とのたまう。仮にうまくいかなかったら…ランニングコストも含め単純に計算しただけでも…億単位の負債を背負うことになる…さらに彼は続ける…「山奥のヤツは完全に閉めてきました」と。ハッ?いまなんと?

何度も聞き直してしまった…せっかく収益の上がっていた店を丸々閉めてきたというのである。そのまま営業しておけばいいものを…なぜ…そのまま置いていつでも再開できるんでしょ?とか、誰かに売ったの?とかいろいろ聞いたのだが…彼の答えはひとつ…「完全に閉めてきました」だけ。

カキ小屋のビジネスメリットを無視…だけならまだしも、保険となる収益源まで断つ…いったい何を考えてるんだコイツは??…そこでハッと気がついた。国分は山奥より比べ物にならないくらい拓けている…常に車が通る…彼からしてみたらもう充分すぎるくらい好条件…天国なのだな…ということに。

そして何よりもっとシンプルに「牡蠣を出す店」として考えたら、彼のやり方はメチャクチャ正しいことにも気がついた。皆さんが御存知のように牡蠣はアブナイ。正確にはアブナイ牡蠣をアブナイ出し方でアブナイ食べ方をしたら、だが。

いま流行りのカキ小屋たちは、その収益性を求めるあまり見事に「アブナイの極致」をいってしまっていることが多々ある。「夜逃げ屋モデル」つまりは空き地にポンっと簡易施設を建てる…衛生なんてあってないようなもんだ。

牡蠣は一日300ℓも海水を濾過するにも関わらず、加熱海域というトンデモ海域で育ったトンデモ牡蠣をぶち込む。原価が安いからだ。そんなヘドロたっぶりの牡蠣を焼くものだから、何十メートルも手前から下水の気持ち悪い臭いで鼻が曲がりそうになる。磯臭い?あれヘドロの臭いですから。ホントにキレイな海や牡蠣は臭いなんてしないんですよ。

で極めつけというのは、そんなデンヂャラスオイスターをお客さんが自由な焼き加減で食べること…加熱用の牡蠣は「中心温度が90度になってから90秒加熱」しないと食べてはいけない牡蠣ですからね!皆さん、それわかってます?…とはいえ簡易な施設に安価な牡蠣がゆえに、みな安かろう悪かろうと覚悟を決めて来店してたりするんですよね、そういえば。

だからなにかあってもなにも言わない。「牡蠣はアタルもんだ」という流れから「食べた客が悪い。自分で焼いてるんだし。」となり、泣き寝入りしちゃう感じなんだろね。実際にそんな話をよく聞く。そもそも考えて欲しい。「そんなヘドロ牡蠣がうまいのか?」っていう根本問題を。

が、これも残念ながら世の大半がこのヘドロ牡蠣なので、みんなその味に慣れ親しんでしまっている。ともすれば、もうそのヘドロ臭さが牡蠣!ってなってしまってるから、普通に受け入れられてしまってる。本物のピュアオイスターを食べたら、すぐにわかるし、もう二度とヘドロ牡蠣は喰えなくなるけどね。

さて話を戻す。件の田中匠一郎がオープンした「すべての常識を覆したカキ小屋」は、実は一番正しいカキ小屋だったという気づき。ちゃんとした建物は衛生管理が行き届く。そして彼が使っている牡蠣はすべて「生で食べられるもの」だけ。しかも東京都内の最高級オイスターバーが使っている牡蠣と同じもの。

当然ながら煮ようが焼こうが訳のわからない磯臭さ=ヘドロ臭はしない。生・レア・よく焼きをお客さんが自由にコントロールして構わない。それで食べ放題3980円…3980円…こんだけ初期投資して…あのレベルの牡蠣使って3980円…ホント大丈夫なのだろうか…。

オレごときがいくら分析してもビジネス的には不安ばかりだが…なにはともあれ2/1に無事オープンしたそうだ。それに結局のところ【お客さんにとってはなにひとつ悪い要素がない】…どころか最高のオイスターハウス、オイスターレストランがまたひとつ鹿児島に誕生しただけのことなわけで。

しかし…ホント奇天烈なヒトだよ、田中匠一郎は。


Ver.2015-02-03

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